「モバイルオーダーを導入すれば人件費が下がる」
「注文業務が減ってスタッフ不足を解消できる」
そんな期待から導入を検討する飲食店が増えています。
しかし実際の現場では、
- 思ったほど人件費が下がらない
- スタッフから不満が出る
- 提供時間が遅くなる
- クレームが増える
といった問題が発生するケースも少なくありません。
私自身、飲食業界で12年以上、店長・マネージャー・店舗運営に携わってきましたが…
モバイルオーダーは「導入すれば成功する仕組み」ではなく、「店舗オペレーションに合っていなければ逆効果になる仕組み」だと感じています。
この記事では、飲食店の現場で実際によく起こるモバイルオーダーのデメリットと、現場が崩れる原因、失敗しないための対策を詳しく解説します。
モバイルオーダーの導入で失敗する飲食店が増えている理由

モバイルオーダーは便利な仕組みですが、
多くの店舗が失敗する理由はシンプルで、
「注文業務を減らすツール」として考えているからです。
本来モバイルオーダーは…
- 注文受付
- POS連携
- キッチン連携
- 配膳導線
- 客席回転率
まで含めて設計し、初めて効果を発揮するものです。
注文だけデジタル化しても、店舗全体の仕組みが変わらなければ現場は楽になりません。
モバイルオーダーの主なデメリット

現在モバイルオーダー導入を検討しているのであれば、
導入後の注意点などを知っておいたほうが安心です。
注文が集中して厨房がパンクする
飲食店の現場で、最も多い失敗がこれです。
従来はスタッフが注文を取り、
- テーブルを回る
↓ - ハンディ入力する
↓ - 厨房へ伝達する
というオペレーションであったとします。
しかしモバイルオーダーを導入すると…
- お客様が自分で注文
↓ - システムを経由
↓ - 厨房へ伝達
上記のようにスタッフの“接客時間”を省いたオペレーションに切り替わります。
そのため「注文の流入速度」が上がるのと、
お客様主体の注文になるので「オーダーが被りやすくなる」ということです。
回転数の多いお店は特に注意が必要
例えばランチ営業を行っている店舗では、お昼のピーク帯に混乱するケース。
20席の店舗で一斉に注文が入れば、
厨房には数十品のオーダーが瞬時に流れ込みます。
結果として、
- 提供遅延
- オーダーの見落とし
- クレーム増加
につながります。

実際に私がモバイルオーダーに切り替えた焼肉屋の失敗談です。
切り替え前はランチのピーク帯、スタッフによる「順番でご注文をお伺いしますので、お待ちください」などの口頭説明で、オーダーが被りすぎないように調整をしていました。
しかしながらモバイルオーダーを導入した後、
お客様の注文が被りキッチンが混乱し、提供遅延などでスタッフが謝罪、Googleの悪い口コミが増えてしまった経験があります。
人件費削減/DX化を目標に導入したものの、私の配慮が至らず、現場が疲弊しキッチンの人員を増員し対応する元も子もない状況になりました。
実際に現場では「注文は楽になったのに厨房が地獄になった」
という声も珍しくありません。
▶もっと詳しく知りたい方へ
→モバイルオーダー導入で、スタッフの不満が増える原因についてまとめた記事です。

人件費が思ったほど下がらない
導入検討時によくある誤解で、注文業務は減るのは事実です。
しかしながら、以下のような業務は残ったままになります。
- 操作説明
- エラー対応
- 配膳
- バッシング
- 会計フォロー
特に高齢者比率が高い店舗では、
「注文方法を教えてほしい」という対応が増えます。
結果として導入する店舗によっては、想定していたほど人件費は削減できないケースが多いのです。
接客品質が低下する
飲食店の価値は料理だけではありません。
近年では“商品クオリティ”や“ホスピタリティ”だけではなく、「顧客体験」も重要視されています。
- 高級店
- レストラン
- 地域密着店
上記ような店舗では、接客そのものが顧客満足度につながります。
モバイルオーダー導入後は、
- 会話が減る
- 提案販売が減る
- 常連客との接点が減る
という変化が起こるため、
客単価の高い店舗ほど影響は大きくなります。
システム障害が起きると店舗が止まる
紙伝票であれば電気系統の機材が不要です。
しかしモバイルオーダーは、
- Wi-Fi
- インターネット回線
- サーバー
上記いずれかが止まれば機能しません。
実際にネット回線の不具合から、「注文が入らない」
「会計できない」「キッチンに伝票が出ない」
というトラブルも経験したことがあります。
そのため万が一を想定して、使用できなくなった場合のアナログでの対応方法も準備しておいたほうが安心です。
お客様が離れてしまうことがある
モバイルオーダーは便利な反面、
すべてのお客様が歓迎しているわけではありません。
特に高齢層はストレスを感じることが多く、実際に
「注文が面倒だから来なくなった」というケースもあります。
現場が崩れる3つの典型パターン

モバイルオーダーを導入して、現場が混乱し崩れてしまうパターンについて解説していきます。
パターン① 導入と同時に人員削減する
最もやりがちな失敗で、
よくオーナーさんの失敗談でも耳にします。
①モバイルオーダー導入
↓
②人を減らす
↓
③現場負荷増加
↓
④離職
という流れで、結果として求人費や再教育コストを踏まえると、明らかに失敗してしまっているパターンです。
特にアルバイト中心の店舗では危険なので、
まずは運用を安定させ、その後に人員配置を見直すべきです。
パターン② メニュー設計を変えない
紙メニューをそのままシステム化してしまう店舗があります。
そのため、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 商品が探しにくい
- カテゴリーが分かりにくい
- 注文ミスが増える
モバイルオーダー導入は、メニュー改善の機会でもあり、
アップセル(おすすめ紹介)やクロスセル(セット販売)などの設定もできるので、メニュー設計時にしっかりと作り込みが必要になります。
パターン③ POSレジと連携していない
実はこれが最も危険です。
モバイルオーダーだけ導入し、
- 売上集計
- 在庫管理
- 会計管理
が連携していないケースがあります。
連携していないと、「二重入力」や「会計ミス」が増え、
また締め作業の際に「売上データ不一致」などが発生します。
人件費削減を目標にしていたものの、ミスが増え締め作業にかかる時間が増加し人件費が高騰、逆に現場負担を減らすどころか増やしてしまう失敗パターンも多いです。
モバイルオーダーが向いているお店の特徴

以下のような業態は効果が出やすい傾向があります。
| 業態・店舗 | 向いている度 | 理由 |
|---|---|---|
| カフェ | ★★★★★ | ドリンク・デザート中心で注文が定型化しており、回転率向上につながる。 |
| ファストフード | ★★★★★ | 注文数が多く、レジ待ちを減らせるためピーク時の効率が大幅に向上。 |
| フードコート | ★★★★★ | 席から注文できるため行列を減らし、受け渡し業務に集中できる。 |
| ラーメン店 | ★★★★☆ | メニュー数が少なく注文しやすい。回転率アップにも効果的。 |
| 牛丼・丼もの店 | ★★★★★ | 注文パターンが決まっているためオーダーミスを減らせる。 |
| 定食屋 | ★★★★☆ | ランチタイムの混雑緩和や注文受付の効率化に役立つ。 |
| 焼肉店 | ★★★★☆ | 追加注文が多く、席から何度でも注文できるメリットが大きい。 |
| 居酒屋 | ★★★★★ | ドリンクや料理の追加注文が多く、スタッフを呼ぶ回数を減らせる。 |
| 回転寿司 | ★★★★★ | 既に実績が多く、注文ミス削減・回転率向上との相性が非常に良い。 |
| ビュッフェ・食べ放題 | ★★★★☆ | 追加注文をスムーズに受け付けられ、スタッフの負担軽減につながる。 |
| テイクアウト専門店 | ★★★★★ | 事前注文・決済ができ、待ち時間を短縮できる。 |
| ベーカリー・洋菓子店 | ★★★★☆ | 予約注文や受取時間指定との相性が良く、レジ混雑を防げる。 |
| アイス・スイーツ専門店 | ★★★★☆ | 若年層の利用が多く、スマホ注文への抵抗が少ない。 |
| 学食・社員食堂 | ★★★★★ | 昼の混雑を分散でき、提供スピードも向上する。 |
店舗の規模間や、売上によって違いはありますが、
大まかにまとめると上記のような業態であれば、
導入するメリットが大きいです。
私の焼肉屋での失敗談も本記事の上部に記載しましたが、
実際「ディナー営業」では効果がありました。
事前にオペレーション設計をしっかり行っていれば、モバイルオーダーのメリットをしっかりと発揮してくれます。
特にモバイルオーダー導入が向いているお店は、
以下のような特徴があります。
| 向いているお店の特徴 | 導入メリット |
|---|---|
| 回転率を重要視している | レジ待ち時間を短縮し、席の回転率が上がる。 |
| ピークタイムがある | 注文受付を分散でき、スタッフ不足を補いやすい。 |
| 追加注文が多い | 客単価アップにつながりやすい。 |
| メニュー数が適度 | お客様が迷わず注文できる。 |
| 若年層・スマホ利用者が多い | 利用率が高く、導入効果を得やすい。 |
| キャッシュレス比率が高い | 注文から決済までスムーズに完結できる。 |
| 人手不足に悩んでいる | 注文受付業務を削減し、接客や提供に人員を回せる。 |
特に注文業務の負担が大きい店舗では効果を実感しやすいと感じています。
▶おすすめ記事
→モバイルオーダーにかかる費用を知りたい方へ。

モバイルオーダーが向いていない店舗

反対に以下の店舗は慎重な判断が必要です。
- レストラン
- 高級志向の寿司、和食店
- 個人経営カフェ
- 常連客中心の店舗
- シニア客が多い店舗
- 10席前後の小規模店
こうした業態では“接客価値”の方が重要になる場合が多いです。
モバイルオーダー導入で失敗しないためのポイント

実際に運用してみて感じたこと、失敗しないためにやっておいたらよかったと後悔したことをまとめます。
段階導入する
いきなり全席導入ではなく、
- ランチのみ
- 一部エリアのみ
- アイドルタイムに試運転
などの一部分から運用を分けて始めるのがおすすめです。
数日試運用をした後に、店舗で切り替えの統一をするなど、
現場が混乱しないように慣れてもらうと失敗するリスクが減ると感じています。

新店でモバイルオーダーを導入する場合は、
グランドオープン前にプレオープン期間を設け、実際の運用を数日間経験しておくことをおすすめします。
モバイルオーダーを使ったことがない既存社員やスタッフでも、事前に注文受付やオペレーションに慣れておくことで、本番の混雑にも落ち着いて対応できていました。
実際に、プレオープンで十分に運用を確認した結果、オープン直後の大きな集客(オープン景気)も大きなトラブルなく乗り越えることができました。
厨房処理能力を確認する
モバイルオーダーを導入する際は、
「厨房が同時に何品まで調理できるか」を把握しておくことが重要です。
例えば…
- 厨房スタッフ2名で同時に20品程度が限界
↓ - 30〜40品の注文が一気に入る
↓ - 調理待ちが発生
↓ - 提供時間は大幅に延びる
待ち時間が長くなることで、お客様の満足度が下がるだけでなく、スタッフにも大きな負担がかかります。
そのため、導入前には次のような点を確認しておきましょう。
- ピーク時に同時調理できる品数
- フライヤー・コンロ・オーブンなど調理設備の処理能力
- 盛り付け・仕上げまで含めた1品あたりの提供時間の目安
- 提供時間が長い商品と短い商品のバランス など。
もし厨房処理能力を超える注文が入る可能性がある場合は、モバイルオーダー側で注文数を制限したり、時間帯ごとの受付数を調整したりする設定を活用するのも有効です。
POSレジとの連携を重視する
導入費用だけで選ぶと失敗します。
POSレジとの連携はほぼ必須事項になるので、確認しておきたいポイントをいくつかまとめておきます。
- 注文内容が自動でPOSレジ・キッチンプリンター・キッチンディスプレイに反映される
- 手入力が不要になり、オーダーミスや入力ミスを防げる
- 会計データや売上データが自動で集計される
- 在庫管理や販売分析と連携しやすい
- スタッフ教育がシンプルになり、オペレーションを統一しやすい
モバイルオーダーは店舗全体の業務効率化まで考えて選定すると、運営状況の改善にも役立つツールになります。
▶おすすめ記事
→POSレジを導入する費用の目安について。

→POSレジの選び方のまとめ記事。

まとめ

モバイルオーダーは飲食店の人手不足対策として非常に有効なツールです。
しかしながら、以下の問題を理解せずに導入すると、かえって現場が崩れる原因になります。
- 厨房の負荷増加
- 人件費削減の失敗
- 接客品質の低下
- システム障害
- POS未連携
重要なのは「導入すること」ではなく、「店舗オペレーション全体を最適化すること」です。
これからモバイルオーダーを検討している方は、費用や機能だけでなく、「自店舗の客層・席数・厨房オペレーション・POSレジとの連携」まで含めて判断することをおすすめします。
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