「人件費率30%を超えたら危険」
飲食業界ではよく聞く言葉です。
しかし実際には…
- 人件費率30%を超えているのに利益が出ている店
- 人件費率25%でも赤字の店
上記のように店舗によって違いがあります。
つまり、“人件費率だけを見ても経営状態は判断できません。”
私自身、飲食業界で12年以上、店長・エリアマネージャー・店舗運営に携わってきましたが、
利益が残らない店舗の多くは、
人件費率そのものよりも「人件費の使い方」に問題があります。
この記事では、
- 人件費率30%の考え方
- 利益が残らない本当の理由
- 改善するためのポイント
を現場目線で解説します。
そもそも人件費率30%とは?

人件費率とは、売上に対してどれくらい人件費がかかっているかを示す指標です。
計算式は以下です。
【人件費率(%)】=人件費÷売上高×100
(例)
■売上500万円
■人件費150万円
➥人件費率は30%
飲食店の人件費率の目安
一般的には以下が目安ですが、業態によって異なります。
| 人件費率 | 状態 | 評価 |
|---|---|---|
| 20〜25% | ◎優秀 | 効率的な人員配置ができており、利益を確保しやすい水準です。 |
| 25〜30% | ○適正 | 多くの飲食店で目安となる標準的な水準です。 |
| 30〜35% | △注意 | シフトやオペレーションを見直す余地があります。 |
| 35%以上 | ✕要改善 | 人件費が利益を圧迫している可能性が高く、早急な改善が必要です。 |
例えば、接客が重要視される以下のような業態では、
30%を超えることも珍しくありません。
- カフェ
- 喫茶店
- バー
- 高級レストラン

仮に喫茶店のような、滞在時間が長く客単価が低い業態であれば、人件費が高騰しやすくなります。
そのためコーヒー1杯の原価率を低く設定し、FL費(原価+人件費)のトータルで60%以下に抑える運営スタイルが多いです。
人件費率30%でも利益が出る店の特徴

人件費が高騰していても、
利益が出る店舗について解説していきます。
客単価が高い
客単価1,500円と3,500円では利益構造が全く違います。
人件費率が同じでも、客単価が高い店舗ほど利益を確保しやすくなります。
【高付加価値の商品を提供】=利益率の高いメニューや、
コース販売での利益確保がしやすいです。
粗利率が高い
【粗利率とは?】
- 売上高:100万円
- 売上原価:30万円
粗利益
100万円 − 30万円 = 70万円
粗利率
70万円 ÷ 100万円 × 100 = 70%
売上だけでなく、原価率とのバランスも重要になります。
例えば、以下のような場合です。
- 人件費率30%
- 原価率25%
人件費が30%であったとしても、十分利益が出る優良店ということです。
投資した人件費が売上につながっている
「接客力の高いスタッフ」がいる店舗では、
人件費が高くても売上を生み出しています。
これは単なるコストではなく投資です。
| 人件費の使い方 | 売上・利益への効果 | 投資といえる理由 |
|---|---|---|
| 接客品質の向上 | 顧客満足度が上がり、リピーターが増える | 常連客が増え、長期的な売上につながる |
| スタッフ教育 | オペレーションが安定し、ミスやクレームが減る | 無駄なコストや機会損失を防げる |
| 提案・おすすめ販売 | ドリンクやデザート、追加注文が増える | 客単価アップに直結する |
| 回転率の向上 | 案内・提供・会計がスムーズになり、多くのお客様を案内できる | 同じ席数でも売上を伸ばせる |
| リピーターの獲得 | 「また来たい」と感じてもらいやすくなる | 新規集客より低コストで売上を維持できる |
| SNS・口コミ評価の向上 | 良い接客体験が口コミやレビューにつながる | 広告費をかけずに集客できる |
| スタッフの定着 | 離職率が下がり、採用・教育コストを削減できる | 長期的に人件費効率が改善する |
| 店舗ブランドの向上 | 「接客が良い店」として評価される | 値引きに頼らず選ばれる店になれる |

高品質な「接客サービスの提供」「ホスピタリティ」を意識した店舗運営行うために、人件費に投資する企業もあります。
その場合の“成功事例”は3ヶ月~を目途に、「リピーターの増加」から売上の水準が上がり、人件費が落ち着いてくるのが特徴です。
人件費率30%がきつくなる本当の理由

人件費が過剰な店舗について、それぞれ特徴があるので解説します。
売上が不足している
最も多い原因で、例えば「人件費150万円」の場合。
売上500万円なら30%ですが、
売上400万円になると37.5%になります。
つまり、人件費ではなく売上不足が問題のケースも多いのです。

店舗のオペレーション的に最低限必要な人員があり、それを下回る売上の場合、人件費を削減したところで改善しません。
従業員が疲弊し、また売上が落ちるという悪循環になってしまった実体験もあるので、
売上が不足している場合は「外販強化」や、
「販促強化」で最低限の売上確保をするべきです。
シフトが過剰
よくある飲食店でのありがちな失敗です。
- 忙しくない時間帯にも人が多い
- 店長が感覚でシフトを組んでいる
こうした店舗は人件費率が上がりやすくなります。
ピークに人が足りない
一見矛盾しているようですが、ピークに人が不足すると…
- 提供遅延
- 機会損失
- 客数減少
につながります。
結果として売上が下がり、人件費率が悪化してしまっているケースもあります。
店長が数字を見ていない
現場経験上、赤字店舗の共通点です。
- 客数
- 客単価
- 人件費率
- 原価率
上記の数字を「責任者が把握していない店舗」ほど改善が遅れます。
POSレジの導入、また数値で店舗状況を改善するように落とし込む必要があります。
人件費削減より先にやるべきこと

多くの経営者は、「人を減らそう」と考えます。
しかし実際には、人件費削減より先に行うべきことがあるのはご存じでしょうか。
客単価を上げる
例えば、スタッフの接客やメニュー改善での、“クロスセル”や“アップセル”を仕組化してしまうという手です。
| 項目 | クロスセル | アップセル |
|---|---|---|
| 意味 | 関連商品を追加でおすすめする販売方法 | より高価格・高品質な商品をおすすめする販売方法 |
| 目的 | 注文点数を増やす | 客単価を上げる |
| 例① | ハンバーガーをご注文のお客様にポテトをおすすめ | レギュラーサイズをLサイズに変更 |
| 例② | コーヒーと一緒にケーキをおすすめ | 通常コースからプレミアムコースへ変更 |
| 例③ | アップルパイとドリンクセットを提案 | トッピング追加や高価格メニューを提案 |
| 効果 | 購入商品数が増える | 1人あたりの購入金額が増える |
客単価が上がれば同じ客数でも売上は上がり、人件費率は改善します。
売上分析を行う
POSレジを活用し、「どの商品が売れているのか」「どの時間帯で購入されているのか」を分析することも大切です。
- 売れ筋商品
- 来店時間帯
- 客単価
感覚ではなく数字で判断することが重要であり、
「売れていない時間帯のキャンペーン」など販促施策を行うことも必要です。

経験上、人件費削減はうまくやらないと衰退しかしません。
販促にお金をかけられるのなら、数値分析から得られた店舗の粗に対して、集客を行う方が店舗状況も良い方向に進みますし、自分の経験と力にもつながります。
生産性を上げる
単純に人を減らすのではなく、業務効率を改善します。
例えば、以下のようなDX化を進める方法です。
- モバイルオーダー
- POSレジ
- キャッシュレス決済
人件費率改善にDXは有効なのか?
結論から言うと有効です。
ただし、「人を減らすため」ではなく、「生産性を上げるため」に活用するべきです。
例えば、モバイルオーダー導入によって、注文業務を削減しながら客単価向上を狙うこともできます。
逆に、店舗全体を見て導入を考えなければ、失敗する飲食店も多いのが現実です。
▶DXについて失敗するお店の特徴を、もっと詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

利益が残る店舗の共通点

私がこれまで見てきた中で、
利益が残る店舗には共通点があります。
それは、「人件費率だけを追いかけていない」ことです。
成功している店舗は、
- 客単価
- 客数
- 原価率
- 生産性
を総合的に見て判断し改善を行っています。
結果として人件費率も適正化した、店舗運営ができるようになります。
まとめ
飲食店の人件費率30%は、必ずしも高いとは言えません。
本当に重要なのは、
- 売上とのバランス
- 原価率との関係
- 生産性
です。
人件費率だけを下げようとすると、
サービス品質の低下や売上減少につながることもあります。
まずはPOSレジなどを活用して数字を把握し、
自店舗の課題を分析することが重要です。
その上で、客単価向上や業務効率化に取り組むことで、無理なく利益の残る店舗運営を目指しましょう。
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