「人件費を削れば利益が増える」
飲食店経営では当たり前のように言われる考え方です。
しかし実際には、
- 人件費を削ったのに利益が増えない
- スタッフが辞めてしまった
- サービス品質が落ちた
- 売上が下がった
というケースも少なくありません。
一方で、人件費を適正化しながら…
- 利益率向上
- スタッフ定着
- 顧客満足度向上
を実現している店舗もあります。
私自身、飲食業界で12年以上、店長・エリアマネージャーとして複数店舗の運営に携わってきましたが、回る店と回らない店には明確な違いがあります。
この記事では、人件費削減に成功する店舗と失敗する店舗の違いを現場目線で解説します。
人件費を削れば利益が出るとは限らない

まず理解しておきたいのは、“人件費は単なるコストではない”ということです。
飲食店において人件費は、以下を支える重要な投資でもあります。
- 接客品質
- 提供スピード
- 清潔感
- リピート率
そのため、人件費だけを削ると売上まで下がるケースがあります。
回らない店がやりがちな人件費削減

人件費削減に失敗してしまうパターンについて解説していきます。
とにかくシフトを削る
よくある失敗談ですが、ランチピークなど“忙しい時間帯”の人員も減らし、少人数で営業しようとする店舗もあります。
結果として、
- 提供遅延
- オーダーミス
- クレーム増加
につながります。
さらにスタッフの負担も増えます。
売上予測をしていない
「暇そうだから削る」という感覚的なシフト管理も、失敗談として少なくはありません。
想定以上に来店があった場合、現場は一気に崩れます。
顧客満足度の低下から、リピートがつかなくなり、
結果として売上が低迷するパターンです。
成功店舗はデータをもとに人員配置を決めています。
ベテランだけに頼る
人件費を抑えるため、
少人数のベテランに依存する店舗もあります。
その場合、以下のリスクにも注意しなければいけません。
- 退職リスク
- 疲弊
- 属人化
長期的に見ると店舗が崩れてしまう可能性があり、
非常に危険です。
人件費を削っても回る店の特徴

逆にスタッフの数を減らしても営業が回る店舗の特徴について。
オペレーションが標準化されている
成功する店舗は、誰が入っても一定品質で営業ができています。
- マニュアル整備
- 役割分担明確化
- 教育体制整備
オペレーション設計がしっかりされているので、少人数でも回りやすくなります。
スタッフ教育ができている
同じ3人営業でも、「教育された3人」と「未教育の3人」では、生産性が大きく異なります。
回る店舗は教育に時間を投資しています。
ピークとアイドルタイムの人員が最適
成功店舗は、時間帯ごとの売上を把握しています。
例えば、
- 11:30~13:30
- 18:00~20:00
だけ人員を厚くするなど、メリハリのある人員配置を行っています。
店長が数字を見ている
利益が出る店舗ほど、以下を毎週確認しています。
- 客数
- 客単価
- 人件費率
- 労働時間
- FLコスト
感覚ではなく数字で判断しています。
人件費を削る前に見るべき指標

店舗運営状況を改善するために、
人件費を削るよりも先に見ておきたい項目は以下のものです。
| 指標 | なぜ重要なのか | 改善のポイント |
|---|---|---|
| 客単価 | 客単価が上がれば、人件費率は自然と改善しやすくなる。 | アップセル・セット販売・おすすめ商品の提案 |
| 回転率 | 同じ席数でも回転率が上がれば売上が増える。 | 提供時間短縮・会計効率化・オペレーション改善 |
| 人時売上 | スタッフ1人が1時間で生み出す売上。人件費の適正を判断する基本指標。 | シフト最適化・教育・DX導入 |
| FLコスト率 | 人件費だけでなく、食材原価も合わせて見ることで店舗全体の収益性が分かる。 | 原価管理・メニュー改善・ロス削減 |
| 客数 | 人件費率が高い原因は、人が多いのではなく「来店客数が少ない」ケースも多い。 | 集客・リピーター獲得・販促強化 |
| アイドルタイムの稼働率 | 暇な時間帯に人が余っていると、人件費率は悪化する。 | 時間帯別シフト・仕込み時間の見直し |
| 提供時間 | 提供が遅いと回転率が落ち、売上機会を失う。 | 調理工程の改善・動線改善・DX活用 |
特に重要な4つの経営指標について
人件費率が高いからといって、すぐにスタッフを減らすのはおすすめできません。
人件費を削る前に以下の4つの指標について、
まず初めに改善できないかを考える必要があります。
理由は、人件費率は「人件費が高い」ことだけが原因ではなく、「売上が十分に伸びていない」ことで悪化しているケースも少なくないからです。
①客単価
客単価が100円上がるだけでも、
店舗全体の利益は大きく変わります。
おすすめ商品の提案やセット販売、トッピングの案内などで客単価を高められれば、人件費率は自然と改善しやすくなります。
②回転率
席数に限りがある飲食店では、回転率も重要な経営指標です。
料理の提供や会計に時間がかかると、お客様を案内できる人数が減り、本来得られたはずの売上を逃してしまいます。
オペレーションを見直し、スムーズな店舗運営を実現することが売上向上につながります。
③人時売上
人時売上とは、スタッフ1人が1時間あたりに生み出す売上のことです。
例えば、人件費が同じでも、人時売上が高い店舗ほど利益は残りやすくなります。
人件費を削るのではなく、人時売上を高める視点でシフトや教育、業務改善を進めることが重要です。
④FLコスト率
FLコスト率とは「Food(食材原価)」と「Labor(人件費)」を合計した割合です。
人件費だけを下げても、食材ロスや原価率が高ければ利益は思うように残りません。
利益改善を目指すのであれば、人件費と原価をセットで管理し、店舗全体の収益バランスを見ながら改善していくことが大切です。

人件費は、削れば利益が出るのは一時的なものです。
過去に多種多様な飲食店に携わってきましたが、人を無理に削った結果…
①店舗スタッフが疲弊
↓
②離職率が高くなる
↓
③売上が低下
↓
④求人費や教育コスト増加
↓
⑤削る前よりも費用がかさむ結果に。
上記のような流れになってしまう、現場を多々見てきました。
「客単価を上げる」「回転率を改善する」「人時売上を高める」「FLコストを適正化する」。
この4つを意識して店舗運営を行うことで、
サービス品質を維持しながら利益の出る店舗へと近づいていきます。
DX化で回る店になるケースも多い

近年はDXによって人件費改善を実現する店舗も増えています。
- POSレジ
- モバイルオーダー
- キャッシュレス決済 など。
ただし、導入するだけでは効果は出ません。
オペレーション改善と組み合わせることが重要です。
▶DXについてもっと詳しく知りたい方へ。

店長経験者が感じる“危険なサイン”
現場でよく見たのが、「人件費率だけを見ている店舗」です。
例えば、
①人件費率を下げるためにシフト削減
↓
②サービス低下
↓
③リピート率低下
↓
④売上減少
という悪循環です。
短期的には改善しても、長期的には利益が悪化するケースが少なくありません。
▶以下、人件費率について詳しく解説した記事です。

利益が残る店舗の共通点

利益が残る店舗は、人件費を削ることよりも、
“生産性を上げること”に注力しています。
具体的には、以下の項目です。
- 教育
- 標準化
- データ活用
- DX活用
結果として、適正な人件費率を維持できるようになります。
▶おすすめ記事①
→モバイルオーダー導入での削減目安について。

▶おすすめ記事②
→POSレジ導入での削減目安と注意点について。

まとめ

人件費を削れば利益が増えるとは限りません。
実際には…
回らない店舗ほど単純なシフト削減を行い、
回る店舗ほど生産性向上に取り組んでいます。
重要なのは、
- 客単価
- 回転率
- 労働生産性
- オペレーション効率
を総合的に改善することです。
これから人件費改善を進めるなら、
「人を減らす」ではなく「少ない人数でも回る仕組みを作る」
という視点を持つことが重要です。
そのためには、POSレジやモバイルオーダーなどのDXツールを活用しながら、店舗運営全体を見直していくことが成功への近道になります。



時間帯で売上高を算出し、使える人件費を割り当てながらシフト組まで「システム化」している企業もあります。