「POSレジを導入すれば人件費が下がる」
POSレジの営業担当やメーカーサイトでよく見かける言葉です。

しかし、実際に飲食店を運営している立場からすると、
「POSレジを入れただけで人件費が下がる」というのは少し誤解があります。
実際には、POSレジそのものが人件費を削減するのではなく、
“POSレジを活用して店舗オペレーションを改善できた店舗”だけが人件費削減の効果を得ています。
この記事では、飲食店現場の視点からPOSレジによる人件費削減効果と限界について解説します。
POSレジ導入だけで人件費は下がらない

まず結論からお伝えしますが、POSレジを導入しただけでは人件費はほとんど下がりません。
なぜなら、レジの機械が変わっただけで、ホールスタッフやキッチンスタッフの人数が減るわけではないからです。
例えば…
- 紙伝票 → POSレジ
- レジスター → POSレジ
上記を変更しただけでは、現場の動きは大きく変わりません。
実際に多くの店舗では、「POSレジを導入したけど人件費は変わらなかった」という結果になります。
人件費が下がる店舗の共通点

POSレジ導入によって人件費が削減できている店舗には共通点があります。
それは、POSレジを中心にオペレーション全体を改善していることです。
①注文業務の削減
例えば「モバイルオーダー」や「ハンディ連携」も可能なPOSを導入する方法です。
【従来の接客オペレーション】
1.お客様を案内
2.注文を聞く
3.伝票記入
4.キッチンへ伝達
モバイルオーダーを導入した店舗の場合…
【導入後の接客オペレーション】
1.空いている席にお客様が座る
2.お客様がQRコードで注文
3.キッチンへ自動送信
に変わることにより、お客様の案内~オーダー~キッチンへ伝達までに必要であった人員が不必要になります。
特に居酒屋やファミリーレストランでは効果が出やすく、
変更することによりピークタイムのスタッフ負担は大きく減少します。
②会計業務の削減
セルフレジや自動釣銭機を導入すると…
- お金の受け渡し
- お釣り計算
- レジ締め
にかかる時間が削減できます。
レジ締めが30分かかっていた店舗が10分以下になるケースも珍しくありません。
店舗によっては年間100時間以上の労働時間削減につながります。
③シフトの最適化
実は多くの店舗で最も効果が大きいのがこちらで、POSレジは売上データを蓄積します。
- 曜日別売上
- 時間帯別売上
- 客数推移
上記のように店舗の詳細分析が可能になると…
「毎週火曜日の15時〜17時は暇なのに2人配置していた」など店舗運営においての無駄が見えてきます。
- 1日1時間削減
- 月30時間削減
結果として適正人員の配置ができるようになり、理想の店舗運営が実現できます。
もちろん仕込み時間やその日の売上など、現場とのすり合わせが必要になってきますが、
私の経験上ほとんどの店舗で必ずムダな時間は存在します。
POS導入による人件費削減の本質はこういった部分がメインになります。
POSレジ導入で期待できる人件費削減額

店舗規模ごとの削減可能な人件費額について、
売上規模での差があるのであくまでも目安にはなってしまいますが、以下のものになります。
| 店舗規模 | 削減効果 |
|---|---|
| 10〜20席 | 月0〜1万円程度 |
| 20〜40席 | 月1〜3万円程度 |
| 40〜80席 | 月3〜10万円程度 |
| 80席以上 | 月10万円以上も可能 |
POSレジ単体ではほとんど変化しないケースが大半ですが、
「ハンディの活用」や「分析によるシフト改善」などを実施した場合、上記のように削減が可能です。
実際に私がモバイルオーダーを導入した店舗
東京の23区内にあるショッピングモール内の店舗で、実際にモバイルオーダーシステムを導入した事例ですが、
【約30坪のカフェ/洋菓子業態】
■月商1200万円(平均)
■人件費率が毎月大体30~31%
➥モバイルオーダー導入により毎月2.3~3.5%削減
結果:月27万円~42万円、利益がプラスに。
導入して成功したパターンのお店になりますが、うまくいけば現場の負担を増やさずに、人件費を削減しさらなる利益の確保ができるようになります。
【逆にモバイルオーダーを導入して失敗した経験】
焼肉/しゃぶしゃぶ業態で導入した時のことですが、
一部の店舗ではお客様と対面でスタッフが話す機会が減り、
顧客体験に影響を及ぼした結果、顧客満足度が下がってしまったこともありました。
上記の業態ではお客様が着席されてから、
「店舗の説明~オススメメニューの紹介」をマニュアルに組み込むことで改善しましたが、導入するのにもデメリットがあることも知っておいてください。
▶POS導入にかかる費用の目安
→人件費削減はわかったけど…そもそもPOSレジの金額について知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

人件費削減より大きい「見えない効果」

実はPOSレジで得られる最大のメリットは人件費削減ではありません。
導入することによって、得られる「見えない効果」についてまとめていきます。
①店長の作業時間削減
飲食店では店長や社員など、現場責任者がしないといけない以下業務、
- 売上集計
- レジ締め
- 日報作成
- 在庫管理
POSレジによって簡易化、自動化されると負担が軽減されますよね。
「店長や社員の負担が減る=他のことに時間が使える」状況を作ることが可能になります。
- 接客指導
- アルバイト教育
- 販促活動
- 店舗分析
現在、ES(従業員満足度)が重要視されている時代において、負担を少しでも減らしてあげたいという会社の行動から、
「モチベーションが上がる→離職率が下がる→生産性が向上する」良いサイクルが生まれやすいです。
これは数字以上に大きな価値があり、数字では見えない部分のメリットになります。
②ロスの削減
人件費もさることながら、利益へ直結してしまうのが従業員のミスです。
- 打ち間違い
- 会計ミス
- 注文漏れ
- オーダーミス
これらは利益を直接圧迫してしまう原因になります。
POSレジとハンディを連携すると、こういったミスは大幅に減少するので、ロスの削減による食材のムダを減らすことができます。
③人手不足対策
近年は採用難が深刻になっており、飲食店の離職率はどの業種と比べてもワースト1をキープしている状況です。
「以前ならホール4人で回していた店舗も、今は3人しか集まらない」
など1人少ない状況で営業をしないといけなかったり、現場の負担が大きく不平不満につながることもあります。
POSレジやモバイルオーダーは人件費削減も可能ですが、「少ない人数でも営業できる環境づくりができるツール」でもあります。
POSレジ導入の限界

POSレジにも限界があり、すべての悩みを解決してくれるわけではありません。
また業態によってはPOSレジを導入しても、ほぼ効果がでないところもあります。
接客は自動化できない
飲食店では高単価業態ほど、以下が重要になってきます。
- 接客品質
- 提案力
- おもてなし
「高級レストラン」や「和食割烹/高級寿司」などのお店は、POSレジを導入してもスタッフ数を減らせない場合が多いです。
またセルフオーダーや会計の自動化など、顧客体験の面から見ても合わない業態です。
教育不足は解決できない
- 店長のマネジメント不足
- 教育体制不足
- オペレーション設計不足
店舗の問題が上記の場合、POSレジを導入しても改善しません。
むしろPOSを導入しても、使いこなせずに終わるケースもあります。
繁盛店であればスタッフの緩和はできても、人件費削減には限界がある
売上が高い店舗はそもそも忙しく、削減できる人員には限界があります。
例えば、ランチで毎日満席になる店舗では、レジ作業が減っても接客や配膳の人数は必要です。
そのためスタッフがラクに仕事ができる環境づくりは可能ですが、人件費削減メインで考えると、効果はあまり期待できません。
POSレジ導入で失敗しない考え方

POSレジ選びで重要なのは、「人件費を下げたい」ではなく、「どの業務を効率化したいか」を明確にすることが重要です。
- 会計を早くしたい
- オーダーミスを減らしたい
- 店長業務を減らしたい
- モバイルオーダーを導入したい
- 多店舗管理をしたい
目的を明確にすることによって、自店舗に合った選ぶべきPOSレジがわかります。
▶もっと詳しく知りたい方へ
→業態別に合う、合わないを詳しくまとめた記事です。

まとめ|POSレジは人件費削減ツールではなく経営改善ツール

POSレジ導入によって人件費削減は可能です。
しかし実際には、「POSレジを導入したから削減できる」のではなく、「POSレジのデータを活用して店舗運営を改善した結果、人件費が下がる」というのが正しい考え方です。
飲食店経営において本当に重要なのは、
- 売上を見える化すること
- 無駄な作業を減らすこと
- 少人数でも回る仕組みを作ること
になります。
POSレジはそのための道具であり、魔法のように人件費を下げてくれるものではありません。
導入を検討する際は、「どの業務を改善したいのか」を明確にした上で、自店舗に合ったPOSレジを選ぶことが成功への近道です。
▶おすすめ記事
→POSレジ導入を考える方に、現場目線でおすすめのPOSをまとめた記事です。



