飲食店サブスクの始め方と成功ポイント|失敗しない料金設計・運用方法を解説

意外と知られていませんが飲食店でも…

「月額○円でドリンクが飲める」

「毎月一定額でランチを利用できる」

といったサブスクリプション(サブスク)を導入する店舗が増えています。

飲食店にサブスクを導入すると、毎月の継続課金による売上の安定化や、来店頻度の向上、リピーター獲得などが期待できます。

一方で、飲食店のサブスクは「安くすれば会員が増える」という単純な仕組みではありません。

料金を安くしすぎれば利用頻度の高い会員ほど店舗の利益を圧迫し、反対に条件を厳しくしすぎれば「入会するメリットがない」と判断されます。

重要なのは、お客様にとってお得でありながら、
店舗側にも利益が残る仕組みを設計することです。

この記事では、飲食店でサブスクを始める方法から、料金設定、対象メニュー、利用条件、集客、KPI、失敗しやすいポイントまで、店舗運営の視点から詳しく解説します。

飲食店のサブスクとは?

飲食店のサブスクとは…
顧客が月額・年額などの定額料金を支払うことで、
一定期間、決められた商品やサービスを利用できる仕組みです。

一般的な都度払いでは、

来店 → 注文 → 支払い

という取引が毎回発生します。

一方、サブスクでは、

入会 → 月額料金を支払う → 来店・利用 → 継続

という関係をつくります。

飲食店では、例えば以下のような形が考えられます。

タイプ内容
ドリンク型月額○円で対象ドリンクを1日1杯まで
ランチ型月額○円で対象ランチを月○回まで
割引型月額○円で対象商品を毎回○%OFF
トッピング型月額○円でトッピングを無料提供
デザート型月額○円で対象デザートを毎回無料
会員特典型月額○円で会員限定サービスを提供
複合型ドリンク+割引+限定特典などを組み合わせる

実際に飲食店では、コーヒー、ドリンク、ランチ、アルコールなどを対象にした定額制サービスの事例があります。

ただし、サブスク=食べ放題・飲み放題にする必要はありません。

むしろ飲食店では、無制限に商品を提供するよりも、
利用回数や対象商品をコントロールできる仕組みのほうが、
利益を管理しやすくなります。

飲食店がサブスクを導入するメリット

サブスクを導入するメリットは以下のようなものがあります。

1. 毎月の売上をある程度予測しやすくなる

通常の飲食店は、
来店客数によって売上が大きく変動するビジネスモデルです。

  • 平日は好調
  • 雨の日は客数が減る
  • 月末に客数が落ちる
  • 季節によって売上が変わる

立地や業種にもよりますが、概ねこのような変動が避けられません。

サブスクでは、会員数と月額料金が決まれば、
一定の継続売上を確保することが可能です。

月額3,000円 × 会員100人=月間30万円

ただし、ここで注意したいのが、
30万円がそのまま利益になるわけではないことです。

会員が何回利用するのかによって、
食材原価や人件費などのコストが変わります。

サブスク売上=利益

サブスク売上-利用に伴って増えるコスト=サブスクによる利益

上記のような考え方が必要です。

2. 来店頻度を高めやすい

サブスクの大きな特徴は、顧客が「せっかく料金を払っているから利用しよう」と考えやすいことです。

「月額1,500円で対象ドリンクが毎日1杯無料」

例えばですが上記のサービスなら、月に1~2回しか来店しない人よりも、近隣で頻繁に利用する人との相性が良くなります。

つまり、サブスクは単なる値引きではなく、
「来店する理由を毎月つくる仕組み」として考えることが重要です。

3. リピーターを育てやすい

飲食店の経営では、新規顧客を獲得することだけでなく、
一度来店したお客様に再来店してもらうことも重要です。

サブスクの場合、加入後の利用が前提になるため、以下の流れをつくることができます。

  1. 初回来店
    ↓
  2. サブスク加入
    ↓
  3. 2回目の来店
    ↓
  4. 3回目の来店
    ↓
  5. 習慣化

サブスク導入事例では、来店頻度を高める施策と組み合わせて利用されているケースもあります。

飲食店サブスクのデメリット

メリットだけを見て導入すると、失敗する可能性があります。

特に注意したいのが以下の4つです。

① 利用されすぎると利益が減る

月額料金を低く設定しすぎると、ヘビーユーザーの利用によって原価負担が大きくなる可能性があります。

月額料金と顧客がお得になるサービスの配分で、設定が難しいというのが挙げられます。

② 通常客がサブスク会員に移行するだけになる

新しい売上を作るつもりが、「もともと毎週来ていたお客様がサブスクに加入しただけ」という状態になることがあります。

この場合、会員数が増えても店舗全体の売上・利益が増えるとは限りません。

③ オペレーションが複雑になる

  1. 会員証を確認する
  2. 対象商品を確認する
  3. 利用回数を確認する

確認作業等の業務が増えるので、
店舗スタッフの作業増につながる可能性があります。

④ 解約されると継続売上が減る

会員がサブスクに登録して納得感を得られないと、
解約されるリスクもあります。

サブスクは「加入者数」だけでなく、どれだけ継続してもらえるかを考える必要があります。

飲食店サブスクの始め方【7ステップ】

ここからが実際に導入するときの設計です。

STEPやることポイント
1導入目的を決める平日の客数増加、リピーター獲得、アイドルタイム対策など、サブスク導入の目的を明確にする
2対象商品を決める原価だけでなく、調理時間・人件費・人気度・提供オペレーションまで考えて選ぶ
3月額料金を決める通常価格だけでなく、利用頻度や原価、追加注文まで含めて利益が残る料金を設定する
4利用条件を設計する1日○回、月○回、平日限定、時間帯限定など、店舗への負担をコントロールする
5追加注文の仕組みを作るサブスク商品だけで終わらせず、フードやデザートなど通常商品の注文につなげる
6会員管理方法を決めるQRコード、LINE、POS、専用システムなど、スタッフが簡単に確認・処理できる方法を選ぶ
7小さくテストするまず1店舗・1プランなどで開始し、加入率・利用回数・客単価・利益・解約率を確認して改善する

各ステップごとに解説していきます。

STEP1:サブスクを導入する目的を決める

最初に決めるべきなのは「何を売るか」ではなく、
「何を改善するためにサブスクを導入するのか」です。

  1. 平日の客数を増やしたい
  2. ランチのリピーターを増やしたい
  3. アイドルタイムの客数を増やしたい
  4. ドリンクの注文率を上げたい
  5. 新規顧客をリピーター化したい
  6. 毎月の売上を安定させたい

このように目的によってサブスクの設計は変わります。

例えば「平日のアイドルタイムを埋めたい」のに、土日も使えるサブスクを作ってしまえば、本来増やしたかった時間帯以外で利用される可能性があります。

STEP2:サブスクの対象商品を決める

ここは利益に直結する重要なポイントです。

おすすめなのは、「利用されても店舗全体の利益を圧迫しにくい商品」を対象にすることです。

  1. コーヒー
  2. ソフトドリンク
  3. お茶
  4. トッピング
  5. 小さなデザート
  6. 小鉢
  7. サイドメニュー

原価率の低い商品で設計が可能であれば、利益の確保がしやすいです。

また店舗づくりの段階で特別席を設けたり、
予約困難のお店で会員限定の予約時間を設けるなど。

店舗の強みがあれば特別感による会員の確保ができたりもします。

一方で、原価が高い商品や調理時間が長いもの、
人気が高く通常価格でも売れる商品を、
「無制限で提供する設計」は慎重に考える必要があります。

重要なのは、原価+提供時間+ピークタイムへの影響まで見ることです。

飲食店では、食材原価だけでなく、調理工程や人件費、ロスなども利益に影響します。

STEP3:月額料金を決める

サブスク料金は、「お客様が得する金額」だけで決めてはいけません。

サブスク:通常価格500円の商品を対象に、月額2,000円で1日1回利用可能

例えば上記の場合だと、お客様が月5回利用すれば、

500円 × 5回=2,500円相当となるため500円分お得です。

月10回利用するのなら、

500円 × 10回=5,000円相当になります。

ここで重要なのが、「何回来店されたら店舗側の採算が合わなくなるのか」です。

サブスク料金は「損益分岐利用回数」で考える

例えば、以下のような場合です。

  1. 月額料金:2,000円
  2. 通常価格:500円
  3. 1回あたりの変動費:150円

サブスク会員が1回利用するたびに店舗側で増えるコストを150円と考えると…

月額2,000円 ー(150円×利用回数)

という単純な計算ではなく、月額料金と通常営業で得られる粗利との差を含めて設計する必要があります。

  1. 決済手数料
  2. 包材
  3. 人件費
  4. 食材ロス
  5. 無料提供による通常注文の減少
  6. サブスク利用による追加注文

実務ではこういった費用や、追加の売上が見込める可能性までを考えるべきです。

つまりサブスクは、「1人の会員が月に何回来店すると、店舗にいくら利益が残るか」を設計することが大切です。

STEP4:利用回数・利用時間を設計する

飲食店サブスクで非常に重要なのが“制限”です。

「月額○円で何回でも無料」という設計は分かりやすい一方、利用者の偏りによって店舗側の負担が大きくなる可能性があります。

  • 1日1回まで
  • 1日2回まで
  • 月10回まで
  • 平日のみ
  • 14~17時のみ
  • ランチタイム限定
  • 1回の来店につき1人まで

このような条件を設けることが重要になります。

ポイントは、お客様を制限することではなく、店舗が狙いたい利用行動に合わせて条件を設定することです。

例えば、「平日の14~17時を埋めたい」のであれば…

月額1,500円
■平日14~17時限定
■対象ドリンク1杯無料

これなら、ピークタイムの客席をサブスク会員が圧迫するリスクを抑えながら、アイドルタイムへの来店を促せます。

STEP5:追加注文が生まれる仕組みをつくる

飲食店サブスクで非常に重要なのが、サブスク商品そのものではなく、来店した後に何を注文してもらうかです。

「月額1,500円でコーヒー1杯無料」だけでは、コーヒーだけ飲んで帰られてしまう可能性があります。

  1. 【月額1,500円のドリンクサブスク】
     ↓
  2. コーヒーを無料で利用
     ↓
  3. 「せっかく来たからケーキも注文しよう」
     ↓
  4. 客単価800円

追加注文の導線まで作れれば、サブスクによる値引きを補いやすくなります。

つまり、サブスク単体の採算だけを見るのではなく、「サブスク会員1人あたりの総売上」を見ることが重要です。

STEP6:会員管理の方法を決める

自店が比較的、小規模な店舗であれば…

  1. QRコード
  2. LINE
  3. 会員証
  4. POS連携
  5. 専用アプリ
  6. サブスク管理サービス

上記のようなものから、自店に合う方法を選びます。

重要なのは、スタッフが迷わず処理できることです。

「この人は会員?」

「今月何回目?」

「この商品は対象?」

などと毎回確認するような仕組みは、
店舗オペレーションを圧迫します。

サブスクを導入するなら、「会員確認 → 対象商品確認 → 利用処理」までをできるだけ短くすることがオススメです。

STEP7:小さく始めて数字を確認する

最初から全店舗・全顧客を対象にする必要はありません。

小さい規模からテストしていくのが良いでしょう。

例えば…

  1. 月額1,500円
  2. 平日限定
  3. 対象ドリンク1日1杯
  4. 先着100名

というように、加入できる人数を絞ってみるというのも一つの手です。

1~3か月程度の実績を確認し、

  • 加入率
  • 利用回数
  • 継続率
  • 解約率
  • 客単価
  • 追加注文率
  • サブスク売上
  • サブスク利用原価
  • 通常売上への影響

数字を見てから条件を修正するほうが、いきなり大規模展開するよりもリスクを抑えやすくなります。

飲食店サブスクを成功させる7つのポイント

サブスクを導入して成功させるポイントについては、以下をご覧ください。

ポイント具体的な考え方
1. 「安さ」ではなく利用する理由をつくる「頻繁に利用するならお得」「この店に通う理由になる」など、継続して利用したくなる価値を設計する
2. ヘビーユーザーを想定する平均利用回数だけでなく、利用頻度が高い会員が月に何回利用するかまで想定して料金・条件を決める
3. ピークタイムを圧迫しない平日のアイドルタイムや特定時間帯に限定するなど、通常営業への影響を抑えながら来店を増やす
4. サブスク会員の追加注文を促す無料・割引商品だけで終わらせず、フードやデザートなど通常商品の注文につながる仕組みをつくる
5. 通常客との価格差を大きくしすぎないサブスク会員だけが極端に得をする設計を避け、通常価格の価値を維持しながら頻繁に利用する人にメリットを提供する
6. 解約理由を分析する「高い」だけでなく、利用頻度・対象商品・利便性・利用方法など、解約につながった原因を確認して改善する
7. 会員数だけで判断しない会員数だけでなく、利用回数・継続率・客単価・追加注文率・利用原価・会員1人あたりの利益まで確認する

上記項目を押さえておけば、失敗するリスクが減り、
導入するメリットが大きくなります。

飲食店サブスクでよくある失敗

  1. 「月額○円で食べ放題」にする
    • 利用頻度の高い顧客に利用が集中すると、原価負担が大きくなる
  2. 「安ければ売れる」と考える
    • 価格を下げるだけでは利益が減る可能性がある
    • 重要なのは価格ではなく、「利用したい」と思える価値をつくること
  3. 「会員数」だけを成功指標にする
    • 会員数が多くても、利用されなければ店舗への貢献は限定的
    • 利用率・継続率・追加注文・会員1人あたりの利益なども確認する
  4. 通常客への影響を考えない
    • 席が埋まる
    • 人気商品が品切れになる
    • スタッフの負担が増える
    • 通常客の待ち時間が増える
    • サブスク単体ではなく、店舗全体の損益とオペレーションで判断する

サブスクで失敗しやすいのは、こういった事柄が大半を占めます。

導入を検討する場合は、上記を踏まえて検討することがオススメです。

サブスクを導入する前に確認したい10項目

導入前に、次の質問に答えられるか確認してみましょう。

  1. サブスクを導入する目的は明確か?
  2. 誰に加入してほしいのか決まっているか?
  3. 対象商品は適切か?
  4. 1人あたり月何回利用される想定か?
  5. ヘビーユーザーが何回利用しても利益が残るか?
  6. ピークタイムに悪影響が出ないか?
  7. 追加注文につながる仕組みがあるか?
  8. スタッフが簡単に利用処理できるか?
  9. 会員数以外の目標設定をしているか?
  10. 赤字になった場合、条件を変更できる設計になっているか?

この10項目を整理してから始めるだけでも、単なる「割引キャンペーン」としてサブスクを導入するリスクを抑えられます。

まとめ|飲食店サブスクは「値引き」ではなく「来店を設計する仕組み」

飲食店のサブスクを成功させるために、最も重要なのは、
「月額料金をいくらにするか」だけではありません。

本当に考えるべきなのは、

①誰に来てもらうのか
↓
②どの時間帯に来てもらうのか
↓
③何を利用してもらうのか
↓
④何を追加注文してもらうのか
↓
⑤どのくらいの頻度で来てもらうのか
↓
⑥どれくらい継続してもらうのか

という一連の顧客行動までを視野にいれつつ、設計することです。

サブスクは、単に「毎月お金をもらう仕組み」ではありません。

来店頻度を高め、顧客との接点を増やし、通常商品の購入につなげるための仕組みとして設計することで、飲食店の経営にも活用しやすくなります。

そのため、導入前には必ず、売上 → 利用回数 → 原価 → 人件費 → 追加注文 → 店舗全体の利益まで数字をつなげて考えましょう。

「会員数が増えたから成功」ではなく、

サブスクによって店舗全体の利益と顧客価値がどう変化したのか

を見ることが、長く続く飲食店サブスクをつくるポイントです。

また、店内飲食とテイクアウトを組み合わせる場合は、消費税の取り扱いも確認が必要です。

現在の税制では、店内飲食は標準税率、テイクアウトなどの飲食料品の販売は軽減税率の対象となるため、サブスクの対象商品・提供方法によっては税率区分にも注意が必要です。

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